美腸整活コラム

Column
乳酸菌のお話
2022.03.01

乳酸菌のお話

日々環境を変える腸に働きかける

乳酸菌は炭水化物を発酵させて乳酸をつくる菌の総称です。「野菜」のなかにたくさんの種類があるように、乳酸菌には400以上の種類があるといわれています。「野菜が体によい」といわれるように「乳酸菌は腸活によい」といわれます。乳酸菌は腸内の環境を整えるサポートをしてくれるからです。

私たちの腸には数百種の細菌がすんでいることがわかっています。人によって、そして同じ人でも食べたものや体調によって、細菌の種類や組み合わせ、その割合は刻々と変わります。また、腸内環境によって体調が変わるということもあります。腸内細菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種に分けられます。その名の通り、体に善となる働きをしてくれる菌、体に悪さをする菌、様子を見てどちらにもなる菌がいるということです。

一般的には、善玉菌が2割程度、悪玉菌が1割程度、日和見菌が7割程度というのが、成人の正常な腸内環境だといわれています。善玉菌が悪玉菌より優位な腸内環境を保つことが、心身の健やかさのために大切です。

腸は心身の健康、真の健康を左右する

腸は現代においても、まだ謎の多い器官です。近年、その研究が進んだことによって、腸の果たす重要な役割が解明されてきました。「腸脳相関」という言葉が知られるようになり、「腸活」という言葉が飛び交っています。

腸のおもな働きである消化は、私たちが食べたものを栄養として身体中に行き渡らせるという、生命の維持に欠かせない機能です。それだけはありません。近年の研究でわかったことは、腸は単なる消化のための器官ではなく、心身の健康を司るもとになるということです。

たとえば、脳内の主要な伝達物質であるセロトニンの約80%は腸管でつくられること。栄養成分の分解・吸収や、必須アミノ酸の合成、免疫機能の維持なども腸内の細菌叢(腸内フローラ)で行われていることがわかりました。

人間にとって重要な器官である脳と強固なネットワークを築いて、互いに情報をやりとりしているのが腸。腸内環境が悪化すると、腸と脳のやりとりがうまくいかなくなり、心身のさまざまな場所に不調があらわれるのです。

乳酸菌を補うことで腸内から全身の調子に働きかける

腸内で乳酸菌が乳酸や酢酸を生み出すことによって、腸内環境が酸性に保たれます。悪玉菌や体外から侵入しようとするウィルスや病原菌が増えにくい環境を保ち、大腸を刺激して排便を促してくれます。

乳酸や酢酸以外にも、ビタミンB群などをはじめとするたくさんの有効物質を生み出し、血管などを通して体内のすみずみまで行き渡らせます。元気のない細胞に働きかけ、細胞分裂のサポートもしてくれます。

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腸内環境に働きかける乳酸菌をたっぷりと補うことは、快活・快適な生活を叶えるキーポイントです。

予防医学のカギを握るのは良質な乳酸菌

人間のカラダは摂取した栄養が血液によって全身をめぐり、ひとつひとつの細胞が正常に働くことによって、全身のバランスを保っています。それは非常に複雑な仕組みであると同時に、生きものとして当然の基本をそのまま守っていることでもあります。私たちが本来もつ自然治癒力などの仕組みが正常に働いていれば、心身の深刻な不調は寄せつけないはずです。生活習慣や栄養バランスなどに問題があるから、西洋医学でいう治療が必要になる。けれど、治療で症状が治ったとしても、不調をきたした生活を続けていれば、またどこかに不調が出るものです。

特に腸と脳は互いに相関して、私たちが健康でいるためのバランスを保とうとする仕組みをもっています。病気やウイルスに負けない体、アンチエイジングを叶える健康美は、まず腸を整えることから。これは研究で明らかになってきていることです。

そのためには栄養素をバランスよく摂ると同時に、腸内環境を整えてくれる乳酸菌を合わせて摂ることで相乗効果が発揮されることが臨床実験の結果に表れています。

ただし、昨今の乳酸菌ブームには見極めなければならない点もあります。乳酸菌と一口にいっても、わかっているだけで約400種類も存在します。また、生きた菌は胃酸にやられがちで腸まで届きにくい(加熱処理した死菌のほうが胃酸に分解されにくく、腸に届いて作用しやすい。有効成分を凝縮できるので、大量配合、大量摂取しやすい)。多少の量を摂取しただけでは、その人が長年の生活習慣で培ってきた腸内環境に影響を及ぼすことはできにくい。乳酸菌を摂取するなら、そのような研究データに基づいた事実をしっかり知って選んでいただきたいと思います。

この記事の執筆者

このコラムの執筆者

只野 武先生Takeshi Tadano

薬学博士。東北医科薬科大学名誉教授(金沢大学医薬保健学兼任) 統合失調症や認知症を研究し、教育と研究、治療薬の開発に邁進しながら、1992年、滋養強壮ドリンク剤「ゼナ」の抗疲労効果を国内で初めて動物実験により立証。サプリメント研究の先駆者であり、リーダー的存在となる。